漁業

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150年の歴史が語る


定置網漁は、魚を獲りすぎない持続可能な漁法です。

回遊する魚の通り道に網を張り巡らせておき、魚群をこの網に誘い込むという漁法です。日本の沿岸漁業のひとつとして歴史は長く、加賀の戦国武将前田利家が文禄時代(1592年~1595年)に富山湾の定置網で獲れたブリを豊臣秀吉(京都の聚楽第)に献上したという記録が残っています。

魚は夜間、捕食されないために浅い岸に身を寄せています。魚が活動する日の出に、構造物に集まる魚の習性を利用し、予め設置した道網(陸から沖に張る誘導用の網)で定置網へ誘導、漁が行われます。来る魚を待って網に入ってきたものだけを獲るので魚を獲りすぎることがなく、漁場が近いため船の燃料をあまり使いません。また網目の大きさを調整して獲りたい魚を決めているので、なるべく稚魚などを獲らないよう心がけています。こうした特長から、定置網は資源管理型漁業といわれ、持続可能な漁法として、今注目を浴びています。

私たち富戸の定置網には150年の歴史があります。城ヶ崎海岸が急深な地形のため、網は陸からわずか800メートルのところに設置され、ブリ、イカ、アジ、カマス、シイラ、カンパチなど、年間150種以上の魚が網に入ってきます。富戸定置網の特長は、ここが国立公園内の漁場であることです。海から見る城ヶ崎海岸の美しさ、海水の透明度は抜群で、この環境を護りながら漁ができることを私たちは心から誇りに思っています。

乗務員紹介


毎日同じコンディションで漁ができるように


魚も海も好きで27歳までダイビングのインストラクターをやっていました。富戸にも何度も来ていて、ここに住みたいなと思っていた時に漁師を募集していることを知り、迷わず応募。それから26年が経ちます。毎日3時半に起きて、5時から漁をやり、一度戻って朝ごはんを食べてから再び港に来て、昼過ぎまで網の修理をするという毎日です。

嬉しいのはやっぱり大漁の日です。スルメイカが15トン近くも入ったとき、船に積みきれなくてデッキの上に積んで帰ったことや、1回の漁で獲りきれなかったブリを出荷調整を行い数日にわけて獲ったこともありました。年に数回はそんな日があって、やりがいを感じますね。

一方で神経を使うのは網のことですね。急潮や台風の時など、 網が敗れることが一番心配です。定置網の場合、現状の維持管理、毎日漁に出られること、操業の安全が大事です。いつくるか分からない大漁に備えて準備万端に整えておくことを心がけています。

執行役員漁労長 秋元 正樹 

海の上で大事なのは、仲間との信頼関係


伊東出身で、義兄が漁師をやっていたことから興味を持ち、楽しそうだしやってみたいと思って漁師になりました。最初のうち大変だったのは朝が早いこと。まずは朝起きることが仕事でしたね。研修期間中に寝坊して、5時に出る船に間に合わず、戻ってきた船に乗っていた先輩に怒られたことが何度もありました。

漁師の仕事は興味を持って覚えようとしないと分からないことばかりなので、先輩方に聞いたり、見て真似したりしながら学びます。特にロープワークや網の修繕などは、教えてもらっても家で練習するなどしないと、なかなか覚えるのが難しかったですね。

船長になってからは、船の操船や点検・管理も仕事に加わりました。毎日出航できるようにしておくために、責任を持って管理しています。海の上では信頼関係が大事です。乗組員は、言ってみれば家族のような関係性。嘘を付かないことをモットーに、これからも成長していきたいと思います。

船長 加納 常行 

全国に先駆けて、新しいことをやっていきたい。
難しくても、夢がある方を選びたい。


2021年11月、城ヶ崎海岸富戸定置網はいとう漁協から分離して、新たな体制の下でスタートを切りました。これからの漁業のあり方を模索するとともに、若い世代の雇用を維持し、地域に貢献する企業であるために、最先端技術の魚群探知機や漁具を駆使した漁業のスマート化、新時代の販路開拓、観光事業の開発なども視野に入れて活動をしていきたいと考えています。この取り組みは県外の水産業関係者の方々からも注目され、たくさんの方が視察にみえています。

漁船漁業の従事者が減っている中で、定置網は全国の沿岸漁業漁獲量の4割以上を占め、地域の雇用を生む重要な漁業です。陸からすぐの沿岸で魚を誘導して網に誘い込む「待ち」の漁法には、先人たちの知恵と工夫がたくさん詰まっています。魚を獲りすぎないだけでなく、なるべく稚魚などを獲らないよう心がけています。人間にとっても無駄な燃料を使わず危険も少ない。早朝の数時間で漁をやり終えたら、大切な網のメンテナンスを毎日し、少数精鋭での作業も可能です。

そんな定置網の今後の可能性として考えているのが、定置網の養殖場としての機能です。定置網の網は、上手に絞っておけば生け簀として出荷調整用にすぐ使うことが可能です。でもこれからのことを考えるなら、新素材の網を利用して、外洋畜養養殖場としての機能を担うことには夢があります。サバやカンパチ、カワハギ、イシダイ、サーモンなどの魚種でそんなことができないかー新たな挑戦がもう始まっています。

代表取締役 日吉 直人 

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